『日本最古の歌舞伎舞台』は苔むした茅葺き屋根の風情ある佇まい。
『二重』と呼ばれるセリヒキ機構は小さな舞台を二段に重ね、天井と奈落の装置を回すことでせり上げたり、せり下げたりしてゆくものですが、『歌舞伎座』の舞台を見慣れている私でも、それが天井や床にもぐりこんだ80人ものボランティアの方たちの人力で動かしていると聞くと、ちょっと感動ものでした。
そしてこの装置が、この村で生まれた一人の大工、永井長治郎さんの手で、江戸時代にすでに作られていたのだと思うと、驚きもひとしおです。
国の重要有形民俗文化財に指定されているこの舞台もさることながら、この日のために、木を切り倒し、垂木を組んで縄で結び、ゴザを敷いて観客席を組み、セットの背景が剥がれていれば修繕し、芝居の稽古をし・・・半年以上前から土・日返上で準備をしてらした町の方たちの熱意にも感服します。
全てがボランティアでまかなわれ、江戸時代から入場料タダという心意気は今だに受け継がれています。そして「江戸時代の芝居小屋へようこそ」というこのおもてなしの心と、その心が宿った屋根や客席が国の無形文化財に指定されていると聞き、とても嬉しく思いました。
でも、今までそれを支えて来れたのは、村に『茅葺き』『建具』『宮大工』などの職人さんたちがいらしたから。残念ながらこの時勢で、その技を継承する方も減り、ボランティアの数も年々減っているそうです。
更に財政面も厳しく、この一回の公演に必要な実費(縄代、材料、修繕費、衣装クリーニングなど)150~160万円を捻出するのも大変です。
今回初めて、この歌舞伎に外部のボランティアの方々が参加しました。
私に声をかけてくれた友人の映画監督野田香里さんを中心としたメンバーです。彼女は自身がボランティアに参加するだけでなく、外国人の方に赤城町でホームスティを体験して頂きながら歌舞伎のボランティアに参加して頂く企画も立ち上げています。
江戸時代にタイムスリップしたような歌舞伎舞台を再現してくれるこんぴら歌舞伎の金丸座も貴重ですが,江戸時代の建物がそのままが残っている赤城町のこの舞台はまさに、失ったら二度と戻らない貴重な日本の財産。
歌舞伎座が惜しまれつつも建て替えられることになり、尚更、日本人としてこの最古の舞台を支えてゆかなければという思いを強くします。
一人でも多くの方に感心をもっていただき、着物を通してこのイベントを盛りたてる一助となれればと思っています。
野田香里さんのブログはこちら