竺仙という老舗の奥州小紋の浴衣です。
この浴衣、お友達の妹さんに縫って頂きました。実は私も和裁も少し勉強しておこうかと思った時期があり、どうせ習うなら第一人者、村林益子先生に、と思っていました。
ところが偶然にも、お友達の妹さんがその先生について勉強することになったのです。私は興味津々、学校(寺小屋と呼ぶそうです!)の様子などねほりはほり聞かせてもらっておりました。
そして今回、彼女に浴衣を縫ってもらう機会を得たのですが、なんとその仕事の細やかなこと!目がゆく襟の左右の柄のバランスは勿論のこと、前身頃の衽線(おくみせん)の柄あわせまで、丁寧にされているのです。
そもそも小紋ですから、柄があうように出来上がっているものではないのに、自然につながるようにと心を配ってあるのです。
苦労話をきけば、洗濯した時に襟の中に重ねた布が崩れないように糸できちんと止めてあったり、反物の耳の藍色が縫い代に出て目立ってしまわぬよう、余分に縫い代に布を巻き込んで縫ったり、しかもその縫い代が本当に2、3ミリしかないのでは?というぐらい細かい仕事にもかかわらずです。
また糸の色が表に響かないように、地色は白で、そして藍色の柄の部分は青い糸に代えて縫ってもあるそうです。
これを聞いただけでもさぞや大変な仕事だったろうと目眩がし、なんとややこしい柄を選んでしまったことかと後悔しても後の祭りです。
一事が万事、まだまだ細かいところに、素晴らしい心配りや技が込められているのだろうと思うと、本当におろそかに着ることは出来ません。大切に着なければ、と背筋がシャンとする思いです。
村林先生の寺小屋は、とても片手間で何かのタシになるかもなどと生半可な気持ちで教えをこう場所ではないとつくづく思いました。ですからせめてもと先生のお書きになった本を読み、その精神に触れさせて頂こうと思います。
『ます女 きもの手控え』(村林益子著 源流社)
着物のこと、お仕立てのこと、人生の教訓など、様々なことが詰まったエッセイ・・・というより随筆と呼びたい素敵な本です。一つの道を70年以上も誠実に地道に続けてらっしゃる方の言葉はシンプルで深く、とても心に沁みます。